登山は体にいいと言われますが、どのように体にいい効果をもたらすのでしょうか?
一般的に具体的な効果があるといわれる森林浴効果、運動効果、日光浴効果、滝などでのマイナスイオン効果などについて考えてみましょう。
森林浴効果とは
当然のことだが、山歩きをすると緑の樹木、満開の花々を見ながら、森の中を歩きます。
そのため森林浴の効果が期待できます。それでは森林浴をすると、どんな効果が期待できるのでしょうか?
森を歩けば、樹木などが発散するフィトンチッドと呼ばれる化学物質が大量に存在し、これを全身に浴びるます。
フィトンチッドとは、植物が傷つけられた際に放出される殺菌力を持つ揮発性物質のことをいいます。
周辺に多く存在するバクテリアから植物自身を守るための自助作用物質でのことです。
これは植物だけでなく人間に対しても効果があり、人間にとって悪いバクテリアの活動を抑制する働きをします。
また、フィトンチッドは菌に対する抵抗力だけでなく、森林の香りの成分を持っているため、癒しや安らぎを与えてくれます。
フィトンチッドのフィトンとは植物、チッドとは殺すという意味です。
まとめるとフィトンチッドの効用としては、次の3つがあります。
- 除菌作用
- 精神安定作用(ストレス解消)
- 消臭・脱臭作用
上記の3つには次のような作用があると言われます。
- 精神的肉体的ストレスを緩和し、血圧を安定させてくれる
- がんなど成人病に対する免疫力を強くし、予防につながる
- 疲労やストレスで疲れた脳を活性化してくれる
また、樹木の中でも特にマツ、ヒノキなどの針葉樹が発散するフィトンチッドが免疫力の向上などに大きな影響があるとの実証報告もあります。
都市生活者を対象とした実験では、フィトンチッド吸収により抗がんたんぱく質の濃度が上昇したという。
近年、医学界ではこの森林浴の効用を科学的医療分野でも応用できないかと日々研究がなされている。
病気の予防治療の面でも上記のように効果があります。
しかし、健康な人にとってもメリットは大きいものがあります。
日常生活から一時離れ、森の清々しい清涼な空気を吸い、樹木のほのかな香りに全身が包まれることで、我々の心は自然に落ち着きを増し、結果的にリラックスできます。
運動効果・数値から判断する最適歩行
山歩きは全身運動、有酸素運動を長時間行うわけだから当然、運動効果が期待できます。では逆に運動不足になればどんなことがおきるのでしょうか?
1週間以上入院生活を送った経験がある方は体験済だろうが、数日歩かなかっただけでも足の筋肉は退化し、階段を上がるだけでも一苦労だ。
つまり、運動不足で筋肉が細くなり、力が弱くなる。力がなくなればさらに動くのが嫌になるという悪循環に陥り、結果的には廊下が早まる。また、皮下脂肪の燃焼も少なくなるため、スリムさがなくなる。まとめて言えば体力が低下し、肥満に陥る。
ある実験では50歳以上で運動を継続している人と運動不足の人を比較すると、死亡率は5倍以上の差があるとも言われる。
山歩きに限らず歩くという運動は上記のような効果が同様に期待できる。有酸素運動により血液循環が促され高血圧症の予防にも効果がある。
さらに、心臓、肺などの呼吸器や循環器系の機能を向上させることも期待できる。歩くようになってから、腰痛や肩こりが治ったとの話も多い。
いろいろな歩きの形態の中でも山歩きは絶大なカロリー消費を示す。足腰が悪く早足歩行ができないという人でも、ゆっくりペースの山歩きであればランニングに匹敵するほどのカロリー消費量である。
注意したいのは、いくら効果があるからと言って無理な運動は、体に悪い影響を及ぼす。体力には個人差があるのだから、自分の体力レベルを知り、それにあった山歩きを心がけることが大切である。
自分に適した運動量の目安のために表②を参照いただきたい。具体的にどの程度の運動量が自分にとって最適なのか。
それは年代で異なってくる。表②は年代別に分けた最適運動量を心拍数から判断するための目安である。
理想的には最大心拍数を100%とした場合、60~70%を目安に一定期間運動を続けることが望ましい。
つまり、50歳代を例に挙げれば、最大心拍数は170である。その70%は119であるため目安としては120。60%も同様で102であるため目安としては100の心拍数を考慮すれば最適歩行が可能となる。
運動効果・誤解と注意点
山歩きの場合は普段の生活では登場しないような急勾配を登ったり、足場の悪い不整地を歩く場合が多い。
そのため日常生活では使用頻度が減った筋肉を鍛えられ、さらに荷物の入ったザックを背負うことで腹筋・背筋を鍛えられる。また、ストックを使うことで肩や腕の筋力も向上する。
前述したが長時間の山歩きは最良最適な有酸素運動である。その運動エネルギーは肺から吸収する酸素を使っての脂肪燃焼で得られる。肺から酸素を吸収することは呼吸器の強化にもなり、脂肪が燃焼するということは肥満防止にもつながる。
山歩きの運動効果をまとめると次のようなものです。
- 肺や心臓などの心肺機能が強化される
- いわゆる体力がつく
- 足腰の筋肉が強化され、歩くことに自信が出て、いい循環が起きる
- 脂肪燃焼により肥満防止につながり、スタイルが良くなる
ここで注意したい点がある。意外に間違いやすいのが過去に運動していたから大丈夫という意識である。
運動効果の場合、以前にどのような運動をしていたかではなく、現在どのような運動をしているかが大事で、青年時代に過激な運動をこなしていても、その後に中断すれば意味がなくなる。無
理することなく、少しずつ、長い期間、運動を継続することがキーポイントである。
マイナスイオン効果
マイナスイオンは和製英語で学術用語ではない。日本だけで通用する造語である。しいて英訳すれば「負の大気イオン」ともいえる。
科学的に実証されたわけでなく、明確な化学定義もないが、一般的にはマイナスイオンとは「宇宙線、放射線、放電、衝突など何らかの要因で電離しマイナスに帯電した空気中に存在するイオン」といわれている。
空気の澄んだ森林や高原、滝の周辺などに多く存在するともいう。
このマイナスイオンという言葉の原型となったのが、空気イオン効果だ。
これは海外で長年研究され、その代表例がレナード効果である。水滴と水滴が衝突し分裂するときに周囲の空気が負の大気イオン化する現象のこと。
1892年にドイツの物理学者フィリップ・レナードが発表した現象だ。滝や源流地帯など水しぶきが多く発生する場所の空気を清々しく感じる。それはこのレナード効果のためと言われる。
また、レナード効果にはストレス軽減・リラックス作用などがあり、人間の身体に非常に良い効用をもたらすとされている。
もちろんその効用はレナード効果だけではなく複合的産物かもしれない。レナード効果に加え、滝や水辺の爽快な景観や心地よい清冽な空気など視覚的心理的な要因が影響しあうとも考えられる。
ともあれ理論の正否は別にして、水のある清々しい森などはハイカーに不思議な安らぎを与えてくれる。
日光浴効果
植物の場合、日光を浴びることで光合成をおこなうため極めて重要だが、動物も日光のエネルギーを使って身体の成長や代謝に必要な物質の合成を行っている。
具体的メカニズムは、まず骨形成に必要なビタミンDのうち大半は、紫外線によりコレステロールに変化を与えつくりだされている。
このビタミンDが不足すると骨が弱くなり骨折の原因ともなる。次に日光を浴びることで体温調節機能が活発になり、体温が上昇し、汗をかく。
この流れは新陳代謝の機能を活発化させる。さらに日光が脳の活動を活発化させ、体内時計の調節を行うなどの作用があるといわれている。
このように適度な日光浴は健康維持、精神衛生上でも不可欠なもの。医療界でも健康維持のために適度な日光浴を進める場合もある。