登山のビバークで知っておきたいこととは

ビバークとは

山登りをしていると予定していなかった緊急露営をせざる得ない時があります。このことを「ビバーク」といいます。簡単に言うと野宿のことです。また、予定していたとしてもテントなどの幕営装備を持たない場合も「ビバーク」といいます。

近くに適当な山小屋があったりすればよいですが、そうでない場合は自力で朝を迎える準備をしなければなりません。テントがあればテントを張り、なければツエルトなどを利用する。それもなければ、風雨を避けられる場所を見つけたり、樹木を利用して小屋掛けをつくったりする。予期せぬ事態のため山中で一晩を明かすのがビバークです。

もし、「当日中に下山するのは難しい」と判断したら、余裕のあるうちにビバークの決定をしましょう。ある限りの食料、燃料を集めて確認する。ビバークに適した場所は風が避けられ、落石などの心配がない場所です。出来ればたき火が出来ると精神的にも支えになります。

ビバークしなければならない状況は主に次のような場合が考えられます。

道迷いによって下山できなくなった場合

登山中に道に迷ってしまって、予定通りのスケジュールで下山が出来なくなってしまった場合です。これはソロ登山でもグループ登山でも同じです。

この場合は、何とか道を探そうと焦って行動して、暗くなり始めてからビバークの決断をちいられることがありますが、これは良くないパターンです。暗くなってしまうとビバークに適した場所を見つけにくくなってしまい大変危険です。

現在地やルートが分かっているが行動不能な状態になってしまった場合

予定通りの登山コースにいて現在地も把握してはいるものの、極度の疲労やケガなどによって歩けなくなってしまった場合です。もはや自力では完全に下山できないケガの場合は、グループ登山なら誰かが下山して警察に救援依頼をすることになります。携帯電話が通じる場所ならばラッキーです。警察に連絡して指示を仰ぎましょう。

ビバークをするなら日が落ちる前に決断をしましょう

もし実際にビバークをするのなら、最低でも日没30分前には決断をしましょう。暗くなってしまうと周囲の状況が分からず、必要以上に不安が大きくなってしまいます。

大木の幹元や岩陰などまず風を防ぐ場所を選ぶと安心です。一般論ですが、夜間は山から谷へ風が吹きおろす山風になることも覚えておきましょう。非常時なら国立公園内でも焚き火は可能ですので、喫煙者でなくても登山者はライターは携行するべきです。焚き火は暖をとるばかりでなく、精神的な余裕にもなります

ビバークがかえって危険になることもあります

ビバークを実行することが危険になる状況もあります。たとえば、落石や崖崩れのおそれがあるところ、雨で増水したら逃げ場のない沢筋、風をよける場所のない尾根、左右が滑落するほどに急傾斜の痩せ尾根、そして、天候状況がよりひどくなることが予測される場合などです。

こんなところでは、暗くなりかけても歩を進めなければなりません。ただし、次のような条件の場合です。

  • グループ全員が元気
  • 複雑な分岐や危険個所がない
  • コースをよく把握している
  • 目的地が比較的近い
  • ヘッドランプの電池がたっぷりある

ビバークが決定したら慌てずに行動しましょう

ビバークの実行が決定したら、まずは慌てずにビバーク場所を選定しましょう。傾斜が少なくて、転落や落石の心配がなく、風当たりが弱いところを探しましょう。欲を言うと水場が近くにあると安心です。

ビバークをするのなら、雨風が当たらずに暖かく過ごせる場所が一番です。理想的なのは、大きな岩の下部が洞のようにえぐられた岩小屋ですが、人が横になれそうな岩小屋はそうそう見当たりません。岩小屋の次に考えられるのが、岩穴や大木の根元の洞などです。こちらも積み重なった岩や枝が屋根代わりになります。

ただし、明るさの残っているうちに、岩の崩壊の危険はないか、風は当たらないか、雨水が溜まらないか、などをチェックしておきましょう。

また、独立した大岩や大木は落雷の際の標的となります。とくに大木に寄りかかっていた場合、側撃雷を受けてしまう危険があるので、夕方に大きな入道雲が近くに見えたようなときは要注意です。

そして、持っている限りの食料と燃料を出して確認しておきましょう。着られるものは全部着て、ずぶぬれでもない限り眠っても大丈夫です。よく、「眠ったら死ぬ」などと言われますが、疲労困憊した厳寒の冬山でもなければ眠れるときは少しでも眠るべきです。3時間も眠れば翌日の疲労感は全く違ってきます。

もし、携帯電話がつながるようなら、現在の状況やこの後の見込みを家族などに連絡しておきましょう。遭難状況にないビバークの場合、その日の夜のうちに自宅などへ電話しておかないと捜索隊が出動することになることもあります。

ビバーク時は少しでも体温低下を少しでも防ぎましょう

寝るときは、地面からの冷えも出来るだけ遮断しておきましょう。むき出しの地面や岩に接していると、時間が経つにつれて体温はどんどん奪われていきます。ビバークする場所が決まったら、草や枯葉など柔らかいものを敷き詰め、その上にシュラフカバーやビニールシートなどを広げるといいです。

ビバークは地面からの冷えだけでなく、体そのものの冷えも防がなくてはいけません。乾いた替え下着があれば安心ですが、なくても濡れた下着をそのまま着続けることだけは避けましょう。着替えがない場合は濡れた下着を脱ぎ、セーターやフリースを地肌に直接着た上にや雨具を羽織った方が体温の低下を防げます。

なお、上着の裾はズボンの中に入れると体温の放出が最小限ですみます。また、足が冷えるときは、ザックの中身を出して足を入れるようにしましょう。

ビバーク時にあると安心な装備

ビバーク実行時には具体的にどんな装備があると安心でしょうか?次にあげる装備は特別なものとしてではなく普段からザックの中に携行しておきたいものです。「備えあれば患いなし」ではないですが、登山をしていくうえで、これらの装備は揃えておきたいものです。

レインウエア(セパレーツ式)

雨具に関して言えば、いつどんな山でも必携品です。ゴアテックス製のものがベストです。ウィンドブレーカーや防寒着の代わりにもなるので、雨具を持てばウエアを1枚減らせます。

ヘッドランプ

テントや山小屋に泊まる人には必需品ですが、日帰り山行でも携行するようにしましょう。明るく省電力のLEDタイプがおすすめです。予備の電池も忘れないようにしましょう。

シュラフカバー

テント内でのシュラフ濡れを防ぐために使用する、シュラフのカバーです。シュラフほどかさばらないので携行しておくと安心です。雨具を着てこのシュラフカバーに潜り込めば、雨の日に地面にそのまま横になっても体が濡れることはありません。

超軽量ツエルト

ツエルトとは簡易テントのことです。居住性などを考慮すると、あくまでも緊急用といえます。ナイロン製の250g前後のものならペットボトル半分の重さです。軽いものでは150gほどのものもあります。ストックでテントのようにも張れたり、雨除けのタープにも使えます。また寒い時の休憩に頭からかぶったりと多用途に使えます。グループ登山なら共同装備として、3~4人に1つあれば十分です。

レスキューシート

アルミの膜を両面に貼り付けた極めて薄いポリエステル製のシートです。断熱効果が非常に高く、ブランケットのようにくるまったり、かぶったりして使えます。

その他あると便利なもの

新聞紙、ビニールシート、マッチ・ライター、細引きなどです。新聞紙は焚き付けに使えるだけでなく、上着の下で体に巻き付けると意外と暖かいものです。

 

主に日帰りで低山から八ヶ岳、北アルプスを歩いています。登山を始めてからずっとソロ山行です。

まだまだ山はわからないことばかりですが、同じようにソロで山歩きを始めた方に参考になる情報をシェアしていきたいです。

ヤマノコトをフォローする
登山のトラブル
ヤマノコト
タイトルとURLをコピーしました